IAダイアローグ「〈ことば〉と〈モード〉をめぐって」のテキスト素材を断片化して編纂した〈ことば〉たち。
はじめに
この度「IAダイアローグ」と題して、IA Spectrumの浅野さんと対談をさせていただいた。まずは下のリンクから本編を読んでみていただきたい。
こちらのポストでは、「IAダイアローグ」のテキストを断片化し、「何が書かれているか」ではなく「どう書かれているか」に重点を置き、新しいテーマで章立てして、〈ことば〉を並びかえた。
これらの〈ことば〉たちが、読んだ人のための副読テキストやリンク集として、これから読む人のためのトレイラーとして、読む気にならない人のための要約として、検索エンジン経由で訪れる人と検索ロボットためのキーワードとして、また別のダイアローグのためのメモとして、利用されれば幸いである。
また、本来の〈ことば〉の意味が消え去った断章として、意味そのものではなく意味のつながりが、〈ことば〉のつながりではなく〈ことば〉そのものが、生々しく伝わることを目的にしている。
センテンスではなく、単語の内部にはいりこむこと。たとえや慣用語としての単語の表面をすべりぬけてフレーズから状況をよみとろうとするのではなく、単語を抽象としてうけとるのでもなく、むしろ単語の起原にさかのぼり、その構成要素それぞれを、音色とリズムをもった具体的な運動としてとらえ、それらの組み合わせを文字通りうけとること。(……)
ことばは切りはなす。ナイフは量る。過去を量ることばは死者のもの。一方ことばは決める。未来を決める、まだ生まれていないもののことば。ことばを所有することはできない。ことばは向こうからやってくるだけ。それを待ちのぞむことができるだけ。
高橋悠治『カフカ/夜の時間』-「病気・カフカ・音楽」(P.18-20)
〈ことば〉について
何が書かれているか / どう書かれているか / 文章そのもの / その重大さやおそろしさ / 〈ことば〉の体系や連鎖 / 未来の自分 / 自分の書いたテクストに書かされる
すべての〈ことば〉は詩になる / 詩は感情ではなく経験である / 〈ことば〉を通じて我々は何を体験しているのか / 〈ことば〉とは何なのか
デザイン批評について
批評性を持った〈ことば〉 / 強い意志を示すための〈ことば〉 / デザインを語る〈ことば〉を磨く / 経験を評価する枠組み / 「直感的」は経験による結果論 / 「直感的」は「慣用的」を意味する
美的判断 / 「好ましさ」を強要する / 「一般に美しい」 / 論理的な判断を他人と共有する / アート批評とは違う体系
「諸力の相克」 / 分断や対立を超える / 濃淡 / 陰翳 / 振れ幅 / 二元論に対する態度 / より根本的な判断 / 批評的フレームワーク / デザインは「厳然たる真実」ではない / 「柔軟な解答」へのアプローチの多様性 / 判断を客観視する / 相対化する
UXデザインについて
平常心で向き合う / 未踏の領域 / 認知科学の刷り込みへの一撃 / 個人的な想い / 関係性を観察する視点 / 一般論めいたことを語る意味 / 重要なのは言葉ではなくその意味
〈モード〉について
地続きの意味 / 「(時間に関係した)様式・形式」 / 「流行」と「モードレス/モーダル」 / 「言葉」にこだわる権威主義 / 耐久年数 / 好きか嫌いか / コンテンツの強度 / 名付けられることによって〈モード〉になる
フラットデザインについて
名付けることで制限ができる / 「ボタンと名指さなくてはいけないような何か」 / 具体的とは限定的であること / スキューモーフィックな名称 / 抽象化/具象化の綱引き / 現実世界と同じ振る舞いの表現 / 「実物を模倣するかそうでないか」は重要ではない / メタファーからの解放
最適なコンポーネント / 「古いメディア形態から新しいメディア形態が作られる」 / デザインの記号化 / インフレ / フィードバックされた〈モード〉 / 〈モード〉になり社会と結びついた権力
〈モード〉について 2
(モードレスデザインについて)
囚われてる様式・形式を解除すること / 「いまそこにないもの」を召喚する / 万人向けのデザインではない / 利用状況を問わない万能のデザインではない / イノベーションを妨げる還元主義 / モーダルな思考は意識と行動を分ける / 「まずモードレスであれ」 / 「インターフェイス・デザインの次のフロンティアを大胆につくり出す」
UIデザインについて
その世界はまだ未成熟 / 単なるオブジェクトではない / ラディカルなインターフェイス論 / 透明性の神話 / 奥行きのある「窓」 / 経験を映し出す「鏡」 / トレンドやデバイスの多様化 / コミュニケーションの負荷や難易度 / ユーザーの学習コスト / 人との関係を考える / 経験のデザイン
IAの使命 / コミュニケーションのためのデザイン言語 / ある種の「言語」なしには成立しない / デザインパターンの言語化・体系化 / 「ユーザーに自ら語りかけるUI」
〈ことば〉について 2
理想の読者 / 〈ことば〉を通じてしか理解や共感はできない / 〈ことば〉による想像に頼っている / 〈ことば〉にできない / 〈ことば〉にならない
綴られたテクスト / テクスチャー / 織られたもの / ほころびや裂け目 / ちょっとした言い回し / 息づかい / ペン先の震え / 誰かを寄せつけまいとする強がり / 弱さや傷 / 自己投影の対象 / 強烈なフェティッシュ
随分〈ことば〉を問題にした / われわれは〈ことば〉を語り続ける / 〈ことば〉を書き続ける
ことばはただ光であるだけではなかった。それは曇り空のように、ひとつひとつをあざやかにみせながら、その全体に影をなげかけるものでもあった。
自分のかいたことばにまようこともある。それが別な発見のはじまりとなることもある。ことばのとどかないあちら側に真実があるとはかぎらない。かかれてしまえば、ことばは真実ではつくせない意味をもつこともありうるだろう。
よみかえすことは、かきかえることだ。メモをかき、かきうつし、かきなおす。自分に必要なのはそれだけだ。
高橋悠治『カフカ/夜の時間』-「あとがき」(P.186)
おわりに
この対談企画にお声がけいただいた浅野さんに最大限の感謝を。